「トールラテください」
「ホット?アイス?」
「ホットで」
「店内でお召し上がりですか?」
「ええ、お願い」
あろうことか、突然突如、このつまらない、毎日毎日ひまつぶしに困るほどつまらない、わたしの昼休みが、突如としてマンハッタンの、もしくはブルックリンの、ウッディ・アレンの、おしゃれでアーバンなフィルムの、1シーンのように思えてきて、さしずめわたしはダイアン・キートン、あるいはちょっとおばかで、若くて、つまらないことでくよくよ悩み、観客にほんのりキュートな印象を残す名脇役のように思えてきたのでウッディすごいわあ、そこにちょんといるだけで、わたしのこのフワッとした気持ち。ほらこのフワッとした気持ちを見てごらんよ、などと思ってこっそりとあちらを見たら、そらぜんぜん似てないおっさんなんだけどさあ。五反田にウッディアレンいるわけないけどさあ。こっちを向いてすらいなかったけどさあ。